R01_相続税

令和元年度税制改正 <<相続税・贈与税>>

1.個人事業者の事業用資産に係る相続税の納税猶予制度
 (1) 概要
   認定相続人が、平成31年1月1日から令和10年12月31日までの間に相続等により特定
  事業用資産を取得し、事業を継続していく場合、担保の提供を条件に、相続税額のうち、特定
  事業用資産に対応する額の納税が猶予されます。
  担保については、猶予税額に見合ったものが必要です。
 (2) 認定相続人
   経営承継円滑化法により認定を受けた後継者で、令和6年3月31日までに同法に基づいて
  提出された承継計画に記載された者
 (3) 特定事業用資産
  ① 事業の用に供されていた土地、建物で一定の面積までの部分
  ② 固定資産税、自動車税の課税対象となっていたその他の減価償却資産
  ③ これらに準ずるもの
  (注)不動産貸付事業等を除きます。
 (4) 猶予税額の計算
   非上場株式等に係る相続税の納税猶予制度の特例と同額とする。
 (5) 猶予税額の免除
   次の場合には猶予税額が全額免除されます。
  ① 認定相続人が、その死亡の時まで特定事業用資産を保有し、事業を継続した場合
  ② 相続税の申告期限から5年経過後に次の後継者に特定事業用資産を贈与し、後継者が
   その資産について贈与税の納税猶予制度の適用を受けた場合
  ③ その他これに準ずる場合
 (6) 留意事項
  ① 一定の場合に猶予税額の一部が免除されます。
  ② 認定相続人が事業を廃止した場合及び資産を譲渡等した場合には猶予税額を納付しなけ
   ればなりません。
  ③ 上記②の場合には、猶予税額に対して原則年3.6%の利子税がかかります。
  ④ 認定相続人は、相続税の申告期限から3年毎に継続届出書を税務署長に提出しなければ
   なりません。
  ⑤ この納税猶予の適用を受けた場合には、特定事業用宅地等の小規模宅地特例をうけるこ
   とはできません。

2.個人事業者の事業用資産に係る贈与税の納税猶予制度
 (1) 概要
   認定受贈者が平成31年1月1日から令和10年12月31までの間に贈与により特定事業用
  資産を取得し、事業を継続していく場合には、事業用資産の贈与に係る贈与税が免除されま
  す。
 (2) 猶予税額の納付、免除等については、相続税の納税猶予制度と同様となります。
 (3) 贈与者が死亡した時
   特定事業用資産を相続により取得したものとみなし、贈与時の時価により他の相続財産と合
  算して相続税の計算をします。
   その際、相続税の納税猶予の適用を受けることができます。

3.小規模宅地特例の見直し
 (1) 特定事業用宅地等の範囲の見直し
  ア) 相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等については、小規模宅地特例の対象
    から除外されます。
  イ) 上記において、当該宅地等で事業供用されている減価償却資産の価額
    が、宅地等の価額の15%以上である場合は、特例を受けることができます。

4.配偶者居住権の創設
   被相続人の配偶者の保護の観点より、民法が改正され、配偶者短期居住権及び配偶者居
  住権が創設されました。
   この内、税法に関係する「配偶者居住権」は以下のとおりとなります。
 (1) 配偶者居住権の意義
   配偶者居住権とは、配偶者以外の相続人が配偶者の居住していた建物を相続により取得し
  た場合に、配偶者に終身(又は一定期間)建物の使用を認める、という権利です。
 (2) 配偶者居住権の評価
   配偶者が「配偶者居住権」を相続により取得した場合の配偶者居住権等の評価は以下のと
  おりとなります。
  (A) 配偶者居住権の評価額
    建物の時価 - 建物の時価 × (残存耐用年数-存続年数)/残存耐用年数 ×(A)
     (A)・・・存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

    残存耐用年数とは
     建物の法定耐用年数(住宅用)×1.5-築後経過年数
    存続年数とは
     配偶者居住権の存続期間が配偶者の終身の間である場合
       配偶者の平均余命年数
     上記以外
       遺産分割協議書で定められた年数
        (配偶者の平均余命年数を上限とする)
  (B) 配偶者居住権が設定された建物の所有権
    建物の時価-配偶者居住権の価額
  (C) 配偶者居住権に基づく居住建物の敷地の利用に関する権利
    土地等の時価-土地等の時価×(A)
  (D) 居住建物の敷地の所有権等
    土地等の時価-敷地の利用に関する権利の価額
  (注)上記における土地、建物の時価とは相続税評価額を指します。

5.その他
 (1) 教育資金の一括贈与非課税措置
   一定の見直しを行い、適用期限が2年延長されました。
 (2) 結婚・子育て資金の一括贈与非課税措置
   受贈者の所得要件等の見直しを行い、適用期限が2年延長されました。
 (3) 相続税の未成年者控除の改正
   未成年者控除の対象となる相続人の年齢が現行の20歳未満から18歳未満に引き下げら
  れます。
 (4) 次の制度における受贈者の年齢要件
   現行の20歳以上から18歳以上に引き下げられます。
  ① 直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例
  ② 相続時精算課税制度
  ③ 相続時精算課税適用者の特例
  ④ 非上場株式等に係る贈与税の納税猶予制度
  (注) 上記①及び②については、令和4年4月1日以後の相続又は贈与等について適用されま
    す。

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