平成30年度税制改正 <<法人税>> 1. 所得拡大促進税制の改組 (Ⅰ)概要 従来の「所得拡大促進税制」は 「給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の法人税額の特別控除」 に改組されます。 ただし、適用要件の違いにより、以下のように区分して解説します。 (大企業向け) 賃上げ、生産性向上のための税制 (中小企業向け) 賃上げ税制 (Ⅱ) 賃上げ、生産性向上のための税制 ① 概要 下記②の要件を満たした場合には次の金額の税額控除が認められます。 税額控除額=(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×15% ただし、当期法人税額の20%が上限となります。 ② 要件 (ⅰ)と(ⅱ)の要件を共に満たす必要があります。 (ⅰ) 継続雇用者給与等支給額が前年比3%以上増加していること (A-B)/B ≧ 3% A ・・・ 継続雇用者給与等支給額 B ・・・ 継続雇用者比較給与等支給額(前年度のAの金額) (ⅱ) 国内設備投資額 ≧ 当期償却費総額×90% (注) 少額減価償却資産、一括償却資産については、国内設備投資額と当期償却費 総額の両者に含める。 ③ 税額控除額の上乗せ措置 教育訓練費について以下の要件を満たした場合には税額控除額が加算されます。 要件:[(教育訓練費-比較教育訓練費)/比較教育訓練費] ≧ 20% 税額控除額=(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×20% (Ⅲ) 賃上げ税制 (中小企業者向け) ① 概要 青色申告書を提出する中小企業者が下記②の要件を満たした場合には次の金額の税額 控除が認められます。 税額控除額=(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×15% ただし、 当期法人税額の20%が上限となります。 ② 要件 中小企業者の場合は設備投資要件がなく、継続雇用者給与等支給額が前年比1.5% 以上増加していることのみが要件となっています。 (A-B)/B ≧ 1.5% A ・・・ 継続雇用者給与等支給額 B ・・・ 継続雇用者比較給与等支給額(前年度のAの金額) ④ 税額控除額の上乗せ措置 以下の(ⅰ)及び(ⅱ)の要件を共に満たす場合には、税額控除上乗せ措置として控除 額は、次のとおりとなります。 税額控除額=(雇用者給与等支給額-比較雇用者給与等支給額)×25% (ⅰ)給与支給額増加要件 (A-B)/B ≧ 2.5% A ・・・ 継続雇用者給与等支給額 B ・・・ 継続雇用者比較給与等支給額 (ⅱ)その他の要件 以下の(a)又は(b)のいずれかの要件を満たすこと (a) 教育訓練費の増加 (A-B)/B ≧ 10% A ・・・ 教育訓練費の額 B ・・・ 中小企業比較教育訓練費の額 (b) 経営力向上計画の認定 ⅰ)その事業年度終了の日までに中小企業等経営強化法の認定を受ける。 ⅱ)計画どおり経営力向上が行われたことにつき証明される (Ⅳ) 適用関係 平成30年4月1日から33年3月31日までの間に開始する事業年度 2.その他 (1) 電子申告の義務化 資本金が1億円を超える法人等について、法人税、消費税、法人住民税等の電子申告が 義務化されます。 (2) 自署押印制度の廃止 代表者等の自署押印制度が廃止され、代表者の記名押印のみで足りることになります。 平成30年4月1日以後終了事業年度の法人税等申告書から適用されます。 (3) 資産の販売等に係る収益の認識 (ⅰ)資産の販売等に係る収益の認識基準は原則として目的物の引渡し又は役務の提供の 日とする。 (ⅱ)一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って上記ⅰの日に近接する日で収 益認識の会計処理を行った場合にはその処理が認められます。 (4) 返品調整引当金制度の廃止 返品調整引当金制度が廃止されます。 なお、10年間に渡って繰入額を1年ごとに10分の1ずつ縮小した額を繰り入れることがで きます。 (5) 省エネ再エネ高度化投資促進税制の創設 . 一定の認定を受けた.特定事業者等が、高度省エネルギー増進設備等の取得等をして、 事業の用に供した場合、取得価額の30%の特別償却(中小企業者等については取得価額 の7%の税額控除との選択適用)ができる制度が創設されます。 (6) 適用期限の延長 以下の制度について適用期限が2年延長されます。 ① 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例 ② 交際費等の損金不算入制度 ③ 中小企業者等以外の法人の欠損金の繰戻しによる還付制度の不適用措置