退職金

1.退職金とは
  退職金とは退職を原因として支給される退職一時金又は退職年金をいいます。
  (a) 退職一時金
    従業員の退職時に一括して支給される退職金
     所得区分としては退職所得となります。
  (b) 退職年金
    従業員の退職後、一定期間又は生涯にわたって定額で支給される退職金
     所得区分としては雑所得となります。
     この内、適格退職年金等の場合は、公的年金等として税法上優遇されています。
2.退職金の経費性
 (1) 従業員に対する退職金
    会社の経費(損金)として認められます。
 (2) 役員に対する退職金
    過大役員退職金と認定される部分を除き経費として認められます。
     過大役員退職金の判定は、こちら
 (3) 事業専従者に対する退職金
    個人事業主の専従者に対する退職金は白色、青色を問わず経費に参入できません。
3.退職金の範囲
  (1) 金銭での支給だけに限らず、現物支給でも退職金に含まれます。
    また、本来の退職手当のほかに功労金なども含まれます。
  (2) 死亡した際に支給される死亡退職金は相続財産に含まれ、退職金の源泉徴収は必要
    ありません。
4.退職金(退職一時金)支給時の手続
 (1) 退職所得の源泉徴収と特別徴収
    退職金を支給した場合は、所得税については源泉徴収税額、住民税については特別徴収
   税額を計算し、納付しなければなりません。
   (a) 所得税 ・・ 支給日の翌月10日までに税務署に納付します。
      「源泉所得税の納期の特例」の承認を受けている場合は、7月10日及び1月10日
     (又は1月20日)が納期限となります。
   (b) 住民税 ・・・ 支給日の翌月10日までに市区町村に納付します。
   (注) 退職者への支払額は、所得税及び住民税控除後の金額となります。
 (2) 「退職所得の受給に関する申告書」の提出
   退職者に「退職所得の受給に関する申告書」を必要事項を記入の上、会社に提出してもら
  います。
   この申告書は会社で保管するもので、税務署に提出する必要はありません。
 (3) 「退職所得の受給に関する申告書」の提出がない場合
  (a) 「退職所得の受給に関する申告書」の提出がない場合、源泉所得税は以下のように計算
    され、源泉されますので過大になるのが一般的です。
      退職所得に係る源泉所得税 = 退職金額 × 20%
    なお、過大に納付された源泉所得税は確定申告により還付を受けることができます。
  (b) 住民税に関しては「退職所得の受給に関する申告書」の提出がない場合でも提出された
    時と同様に税額を計算し、納税は完結します。
 (4) 源泉徴収票及び特別徴収票の提出
  (a) 退職所得の源泉徴収票を税務署に提出します。
    提出期限は退職後1ヶ月以内ですが、取りまとめて翌年1月31日までに提出しても差し支え
   ありません。
  (b) 特別徴収票を退職後1ヶ月以内に市区町村に提出します。
    提出先は、受給者のその年の1月1日現在の住所地の市区町村となります。
   (注) 特別徴収票は源泉徴収票と複写になっています。
  (c) 退職者本人に交付します。
    源泉徴収票(兼特別徴収票)を受給者にも退職後1ケ月以内に交付します。
5.税額の計算
 (1) 退職所得の分離課税
   退職所得に係る所得税は他の所得と切り離した分離課税です。従って、原則として会社での
   源泉徴収で課税関係は終了し、確定申告の必要はありません。
   しかし、一定の場合は確定申告により税金の還付を受けることもあります。
 (2) 「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けている場合の税金計算
   (注1) それぞれの段階で所定の端数処理を行います。
   (注2) 退職金が下記により算定した 「退職所得控除額」 以下の場合は所得税・住民税は
      かかりません。
  (ⅰ) 退職所得控除額の計算
   (a) 勤続年数が20年以下の場合
      40万円 × A (80万円に満たない場合には、80万円)
       A : 勤続年数 (1年未満の端数は切り上げ)

   (b) 勤続年数が20年超の場合
      800万円 + 70万円 × (A-20年)
   (c) 障害者に係る特例
     障害者になったことが直接の原因で退職した場合の退職所得控除額は、上記の方法に
    より計算した額に、100万円を加えた金額です。
  (ⅱ) 「退職所得の金額」の計算
    退職所得の金額(C)= [ 退職金額(収入金額)-退職所得控除額 ] × 1/2
  (ⅲ) 所得税の計算
    所得税額の速算表において 「 課税所得金額 」 に 退職所得の金額(C) を当てはめ、
    所得税額を算出します。
  (ⅳ) 住民税の計算
   (ア) 住民税の計算
    (a) 道府県民税 (=D) ・・・ 退職所得の金額 (=C) × 4%
    (b) 市町村民税 (=E) ・・・ 退職所得の金額 (=C) × 6%

   (イ) 特別徴収すべき住民税額の計算
     (ア) で求めた住民税額から10%を控除して特別徴収税額を求めます。
    (a) 特別徴収すべき道府県民税 ・・・ 道府県民税 (=D) - (D × 10%)
    (b) 特別徴収すべき市町村民税 ・・・ 市町村民税 (=E) - (E × 10%)

6.弔慰金と退職金
 (1) 弔慰金の取扱い
   社員が死亡した場合に会社がその遺族に支給する弔慰金の取扱いについては、
    a) 一定額までを弔慰金として非課税
    b) これを超えた部分については退職手当に当たる
   とされています。
   この場合の「一定額」とは、
    a) 業務上死亡の場合は給与額の3年分
    b) 業務上死亡ではない場合には給与額の半年分

   として取り扱われています。
 (2) 税金への影響
   遺族にとっては、弔慰金は相続財産の対象外、死亡退職金は相続財産の一部となり、
  どちらに分類されるかにより相続税の計算に影響を与えます。
   なお法人税法上は、弔慰金の一部が退職金扱いとされた場合であっても、退職金総額
  が妥当な範囲内であれば損金算入できます。

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