繰延資産

1.繰延資産の定義
 (1) 繰延資産の要件
   繰延資産とは以下の4つの要件を備えたものをいいます。
   ただし、資産の取得に要した費用を除きます(資産の取得価額を構成するため)。
   ⅰ 代価の支払が完了し又は支払義務が確定した費用である
   ⅱ 役務の提供を既に受けている
   ⅲ 支出の効果が将来にわたって発現するものと期待される
   ⅳ 費用収益対応の原則により、資産として計上されたもの

 (2) 繰延資産の種類
  (A) 企業会計上の繰延資産
   (1) 創立費
     法人の設立のために支出する費用(設立登記費用等)
   (2) 開業費
     法人の設立後事業を開始するまでの間に支出した費用
     個人事業においては営業を開始するまでの費用
   (3) 開発費
     新たな技術、新たな経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓のために特別に支出
     する費用
   (4) 株式交付費
     新株の発行や自己株式の処分のために支出する費用
   (5) 社債等発行費
     社債券等の発行のために支出する費用
  (B) 税法固有の繰延資産
   (1) 自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出す
     る費用
   (2) 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
   (3) 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
   (4) 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
   (5) イからニまでに掲げる費用のほか、自己が便益を受けるために支出する費用
 (3) 繰延資産の計上区分
   企業会計上は上記の5つの繰延資産のみが「繰延資産」として貸借対照表の資産の部に
   計上することが認められており、税法固有の繰延資産は「長期前払費用」等の科目で計
   上されることとなります。
2.少額繰延資産
  取得価額が20万円未満の繰延資産は「少額繰延資産」として即時償却(損金経理)を
 することができます。
3.平成19年度の繰延資産についての改正
  (1) 繰延資産から除外されたもの
   イ 試験研究費
   ロ 社債発行差金
  (2) 名称が変更されたもの
   イ 創立費(旧創業費)
  (2) 名称が変更されるとともにその範囲について変更があったもの
   イ 株式交付費(旧新株発行費)
   ロ 社債等発行費(旧社債発行費)
4.繰延資産とした場合の償却期間
 Ⅰ) 税法上一時償却が認められる繰延資産
   以下の繰延資産については税法上は一時償却(任意償却)が認められますが、会計上
  の償却期間はそれぞれ次のとおりとなります。
   (1) 創 立 費 ・・・ 会社成立後5年以内
   (2) 開 業 費 ・・・ 開業後5年以内
   (3) 開 発 費 ・・・ 支出後5年以内
   (4) 株式交付費 ・・・ 発行後3年以内
   (5) 社債等発行費・・・発行後3年以内
 Ⅱ) 税法上均等償却とされる繰延資産
  税法固有の繰延資産については一時償却が認められず、それぞれ法人税法で定める
  「支出の効果が及ぶ期間」での均等償却となります。

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