平成30年度税制改正 <<所得税>> 1.給与所得控除の見直し (1) 給与所得控除額の引き下げ 給与所得控除額が一律10万円引き下げられます。 (2) 給与所得控除の上限 給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入金額が引き下げられ、下表のとおりと なります。 改正前 改正後 上限額が適用される給与収入の額 1000万円 850万円 給与所得控除の上限額 220万円 195万円 (3) 上記(1)、(2)の改正に伴い、源泉徴収税額表等が改正されます。 (4) この改正により給与所得控除額は次のとおりとなります。 給与等の収入金額 給与所得控除額 1625千円以下 550,000円 1625千円超1800千円以下 給与収入金額×40%-100,000円 1800千円超3600千円以下 給与収入金額×30%+80,000円 3600千円超6600千円以下 給与収入金額×20%+440,000円 6600千円超8500千円以下 給与収入金額×10%+1,100,000円 8500千円超 1,950,000円 2.公的年金等控除の見直し (1) 公的年金等控除額の引き下げ 公的年金等控除額が一律10万円引き下げられます。 (2) 公的年金等控除の上限 ①公的年金等控除の上限額が適用される公的年金等の収入金額が1000万円となります。 ②上記における公的年金等控除の上限額は195万5千円となります。 (3) この結果、公的年金等控除額は次表のとおりとなります。 ただし、「公的年金等以外の合計所得金額が1000万円以下の場合」に限ります。 公的年金等の収入金額(A) 公的年金等控除額 65歳未満 65歳以上 130万円以下 60万円 110万円 130万円超~330万円以下 (A)×25%+275千円 110万円 330万円超~410万円以下 (A)×25%+275千円 410万円超~770万円以下 (A)×15%+685千円 770万円超~1000万円以下 (A)×5%+1,455千円 1000万円超 1,955千円 (4) 高額所得者に対する控除額の減額 ①公的年金等に係る雑所得以外の所得に係る合計所得金額が 1000万円超2000万円以下の場合更に10万円、 2000万円超の場合は20万円、 公的年金等控除額が減少します。 ②この結果、公的年金等に合計所得金額が1000万円を超える場合の公的年金等控除額は 次表ととおりとなります。 公的年金等以外の合計所得金額 公的年金等控除額 1000万円超~2000万円以下 上記(3)の表の金額-10万円 2000万円超 上記(3)の表の金額-20万円 3.基礎控除の見直し (1) 基礎控除の引き上げ 基礎控除が原則として10万円引き上げられます。 基礎控除:38万円(現行)⇒48万円(改正) (2) 高額所得者に対する基礎控除額の減額 合計所得金額が2400万円超の場合基礎控除額は以下のように逓減します。 合計所得金額 基礎控除の額 2400万円以下 48万円 2400万円超、2450万円以下 32万円 2450万円超、2500万円以下 16万円 2500万円超 0円 (3) 年末調整において「給与所得者の基礎控除申告書」の提出が必要となります。 4.扶養親族等の範囲の改正 (1) 扶養控除、配偶者控除及び障害者控除を適用する際の同一生計配偶者及び扶養親族の 合計所得金額要件が現行の38万円から48万円となります。 (2) 源泉控除対象配偶者の合計所得金額要件が現行の85万円から95万円となります。 (3) 勤労学生の合計所得金額要件が現行の65万円から75万円となります。 5.配偶者特別控除の所得金額要件の改正 (1) 配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額要件が以下のように改正されます。 現 行 ・・・ 「38万円超123万円以下」 改正後 ・・・ 「48万円超133万円以下」 (2) 上記(1)の改正に伴い、配偶者特別控除額の算定の基礎となる配偶者の合計所得金額 の区分がそれぞれ10万円引き上げられます。 6.所得金額調整控除制度の創設 (1) 給与収入が850万円超の給与所得者 (ⅰ) 概要 給与等の収入金額が850万円を超え、下記の要件に該当する場合は、最大15万円を 給与所得から控除します。 (ⅱ) 対象者の要件 以下のいずれかの要件を満たす居住者 ① 本人が特別障害者 ② 23歳未満の扶養親族を有する者 ③ 特別障害者である同一生計配偶者若しくは扶養親族を有する者 (ⅲ) 給与所得から控除する金額 以下の計算による金額を給与所得から控除します。 控除額 [ (A) - 850万円 ] ×10% (A) ・・・給与等の収入金額 (1000万円を超える場合には1000万円) (2) 給与収入と公的年金等収入がある場合 (ⅰ) 概要 給与所得と公的年金等の雑所得を共に有する場合、今回の改正で給与所得控除、公的 年金等控除がそれぞれ10万円、合計20万円の所得控除額の減額となり、負担増となる ため、調整計算(給与所得の減額)をします。 (ⅱ) 対象者 以下の3要件を全て満たす居住者 ① 給与所得控除後の給与等の金額(=A) > 0 「給与所得控除後の給与等の金額」 とは [給与等の収入金額] - [給与所得控除額] ② 公的年金等に係る雑所得の金額(=B) > 0 「公的年金等に係る雑所得の金額」 とは [公的年金等の収入金額] - [公的年金等控除額] ③ A+B > 10万円 (ⅲ) 給与所得から控除する金額 [ (A) + (B) ] - 10万円 (A) ・・・ 給与所得控除後の給与等の金額(10万円を限度) (B) ・・・ 公的年金等に係る雑所得の金額(10万円を限度) (3) 控除する時期 ① 上記(1)の調整は、年末調整の際に適用できます。 ② 所得金額調整控除を年末調整時に行うためには、所得金額調整控除の申告書を提出 する必要があります。 7.青色申告特別控除額の引き下げ (1) 原則 青色申告特別控除の額が現行の65万円から55万円に引き下げられます。 (2) 特例 以下のいずれかに該当する場合は 従来通り65万円の控除が認められます。 ⅰ) 仕訳帳、元帳の備えつけ及び保存を法律に基づいて電磁的記録で行っている (電子帳簿保存)。 ⅱ) 所得税の確定申告書、貸借対照表、損益計算書の提出を提出期限までに 「電子申告」により行う。 8.適用関係 上記1~7の改正は、平成32年分以降の所得税について適用されます。 9.その他 (1) 家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例 必要経費に算入できる金額の最低保障額が以下のように10万円引き下げられます。 65万円(現行)⇒55万円(改正) (2) 給与所得者の特定支出の控除の特例について、一定の旅費等を追加する。 (3) 保険料控除申告書等の記載事項の電磁的方法による提供が可能となりました。 (4) 支払調書等の光ディスク等による提出義務者について改正されました。 判定基準・・・その年の前々年に提出すべきであった支払調書の枚数 現行・・・ 1000枚以上 改正後・・・ 100枚以上 平成33年1月1日以後に提出される支払調書等について適用されます。 (5) 特定支出控除の範囲について、一定の旅費等が追加されます。