仕入税額控除

1.仕入税額控除とは
 (1) 消費税の納付税額は、原則として課税売上高(税抜)に税率(現在は8%)を掛けた金額
   から課税仕入高(税抜)に税率を掛けた金額を差し引いて計算します。
   納付すべき消費税額 = [(税抜)課税売上高]×[税率] - [(税抜)課税仕入高]×[税率]
    課税仕入高に8%を掛けた額を差し引くことを仕入税額控除といいます。
    簡単に言えば、得意先から受け取った消費税から支払った消費税を控除するのが 「仕
   入税額控除」 であるわけです。
    ここでいう 「課税仕入」 とは、商品や原材料等の購入のほか各種物品や有形・無形資産
   の購入、役務の受け入れ等をいいます。
    また、消費税を納めない免税事業者や一般消費者から購入したものであっても、仕入税額
   控除の対象となります。
 (2) 消費税は財貨・用役の「消費」に着目して課税されるものです。従って、消費を伴わな
   い取引、例えば土地購入、給与、税金、保険、寄付金の支払いなどは単なる金銭の移
   転に該当するものとして非課税又は不課税とされます。
 (3) 消費税は国内での取引に対して課税されますので、国外で支出する旅費、通信費、
   飲食代、物品購入費等は課税仕入となりません。
 (4) 消費税は事業者が行う事業に対して課税されますので、個人がたまたま行う資産の
   譲渡等には課税されません。
2.原則として課税仕入になるもの
 (1) 商品などの棚卸資産の購入
 (2) 原材料等の購入
 (3) 有形・無形固定資産(土地を除く)の購入
   ☆ 固定資産については購入時点で仕入税額控除をしますので、減価償却費は課税
     対象外となります。
 (4) 旅費交通費、広告宣伝費、通信費、水道光熱費などの支払い
 (5) 事務用品、消耗品、新聞図書などの購入
   ☆ これら購入品のうち事業年度末に貯贓品に計上するものがある場合でも購入した
     時点で仕入税額控除をしますので注意が必要です。
 (6) 修繕費
 (7) 外注費
 (8) 人材派遣料、外部委託費
3.原則として課税仕入れにならないもの
 (1) 給与手当(通勤手当を除く)、賞与
 (2) 租税公課、保険料
 (3) 寄付金(金銭で支給するもの)
4.課税と非課税が混在するもの
 (1) 旅費交通費
   ⅰ) 国内の出張旅費、宿泊費、日当についてはその支給額のうち通常必要であると認
     められる部分の金額は、課税仕入になります。
   ⅱ) 海外の出張旅費、宿泊費、日当は原則として課税仕入になりません。
   ⅲ) 通勤のため通常必要とされる範囲内の通勤手当については、所得税法上非課税
     とされる金額を超えている場合であっても、全額が課税仕入になります。
 (2) 福利厚生費
   原則的には課税取引が多い中、以下のものは非課税とされます。
   ⅰ) 従業員に支給する祝金、見舞金、香典その他慶弔金
   ⅱ) 社会保険料、共済掛金等
   ⅲ) 海外旅行費
   ⅳ) 家賃・国内旅行・飲食費等の一部を従業員に金銭で支出するもの
 (3) 交際費
   原則的には課税取引が多い中、以下のものは非課税とされます。
   ⅰ) 得意先へ交付する商品券、ビール券等
   ⅱ) 祝金、餞別、香典等の弔慰金
   ⅲ) 飲食代に含まれる特別地方消費税
   ⅳ) ゴルフプレイ代に含まれるゴルフ場利用税
 (4) 会費や入会金
   支払う会費や入会金とそれによって受ける役務の提供などとの間に明らかな対価関係
  があるかどうかによって判定します。
   ⅰ) セミナ-や講座などの会費、飲食代として支払う会費については明確な対価関係
     があり、課税仕入となります。
   ⅱ) 団体等の業務運営に必要な通常会費については、一般的には対価関係がありま
     せんので課税仕入となりません。
   ⅲ) ゴルフクラブ、レジャ-施設等を利用するための入会金(返還されるものを除く)は
     明らかな対価関係があり、課税仕入になります。
 (5) 賃借料、地代家賃
   ⅰ) 備品・機械装置等の賃借料は課税仕入となります。
   ⅱ) 事務所用建物、工場・倉庫などの賃借料は課税仕入となります。
   ⅲ) 土地(更地)の賃借料は非課税となります。
      土地付建物で土地・建物それぞれの賃借料を区分している場合でも全額課税仕入
      となります。
   ⅳ) 事業用として使用する駐車場の賃借料は課税仕入となります。
   ⅴ) 住宅、アパート等居住用として使用する家屋・土地の賃借料は非課税となります。
 (6) 土地、借地権の購入
   ⅰ) 土地及び借地権取引は原則として非課税となります。
   ⅱ) 土地付建物を一括購入した場合は、土地代と建物代を区分する必要があります。
   ⅲ) 土地購入に際して支払う仲介料は課税仕入となります。
   ⅳ) 購入した土地について造成費を支出した場合は課税仕入となります。
6.建設仮勘定の仕入税額控除の時期
 (1) 建物等の本勘定への振替をする前、つまり建物等の建築中での物の引渡しや役務の
   提供があれば、その時点での課税仕入とされ税額控除を行うことになります。
 (2) 例外として、工事の目的物のすべての引渡しを受け、本勘定に振り替えた日の課税期
   間における課税仕入とする方法も認められます。
7.未成工事支出金の仕入税額控除の時期
 (1) 未成工事支出金勘定として経理された材料仕入や外注費、諸経費についても、原則
   的にはそれぞれの取引ごとに資産の引渡しや役務提供を完了した日に仕入税額控除
   の対象とします。
 (2) 例外として、請負工事による目的物の引渡しをした課税期間(完成工事高として経理
   した事業年度)の課税仕入とすることを継続して適用しているときは、その処理が認め
   られます。
8.免税事業者になる場合があるとき(原則課税方式の場合)
 (1) 免税事業者が新たに課税事業者となる場合に、課税事業者となる事業年度の期首棚
   卸資産のうちに、納税義務が免除されていた期間に仕入れた棚卸資産がある場合にそ
   の資産に係る消費税額を仕入税額控除の対象とします。
    なお、この適用を受けるためにはその対象となる棚卸資産の明細を記載した書類を7
   年間保存しなければなりません。
 (2) 逆に課税事業者が免税事業者となった場合には、課税事業者であった課税期間の末
   日において所有する棚卸資産のうちその課税期間中に仕入れた棚卸資産に係る消費
   税額は、仕入税額控除から除外します。
9.仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存
 (1) 仕入税額控除の適用を受けるためには、課税仕入の事実を記載した帳簿及び請求書
   等の両方を保存する必要があります。
 (2) 税込価格30,000円未満の場合には、請求書等の保存を要せず、帳簿の保存のみで
   よいこととされています。
 (3) 請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由がある場合 (例:乗車
   券、搭乗券等)には請求書等の保存がなくても仕入税額控除ができます。
   ただし、やむを得ない理由及び法定事項を記載した帳簿の保存は必要です。
 (4) 帳簿及び請求書等の保存期間は7年です。
   ただし、6年目以降は帳簿又は請求書等のいずれか一方でよいこととされています。
 (5) 帳簿や請求書等には次の事項が記載されている必要があります。
    ①課税仕入れの相手方の氏名又は名称
    ②資産譲渡又は役務提供の内容
    ③支払年月日
    ④支払対価の額
   なお、請求書等には事業者(自己)の記載を要します。

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