洗替処理(洗替法)

1.広義の意味での洗替処理
 (1) 洗替えとは
   会計処理における洗替えとは、決算時において貸借対照表の各科目の残高を会計上適正
  な金額に更新処理することをいいます。
 (2) 洗替処理の目的
   日常の会計業務における仕訳では、細部まで発生主義の仕訳を行わず、現金主義で仕訳す
  ることが多いため、結果として貸借対照表科目残高が正しく計上されていないこととなります。
   従って、決算時に現金主義会計から発生主義会計に改めるため、主に二つの会計処理が必
  要となります。
   ① 流動項目(流動資産・流動負債)についての洗替処理
   ② 固定項目(固定資産・繰延資産・長期前払費用等)についての償却又は減価償却
 (3) 月次決算と年度末決算(確定決算)
   洗替処理は月次決算で行う場合と確定決算で行う場合とがあります。
   月次決算での洗替処理は月次損益をより適正に把握するために必要となります。
 (4) 洗替処理の仕訳例
  ① 売掛金
    前期末残高の減少処理   売上高 ××× / 売掛金 ×××
    当期末残高の計上仕訳   売掛金 ××× / 売上高 ×××
  ① 未払費用(給与)
    前期末残高の減少処理   未払費用 ××× / 給与手当 ×××
    当期末残高の計上仕訳   給与手当 ××× / 未払費用 ×××
 (5) 洗替えとはならない会計処理・・・(例:売掛金の場合)
  ① 確定決算時に計上した売掛金についての減少処理を洗替えではなく通常の仕訳で行うと
   次のようになります。
    前期末残高の計上仕訳     売掛金   ××× / 売上高 ×××
    当期での売掛金入金処理   現金預金 ××× / 売掛金 ×××
    当期末残高の計上仕訳     売掛金   ××× / 売上高 ×××
  ② 上記の仕訳の場合は洗替処理ではなく、単に期末時点で売掛金の未計上分を追加計上
   しただけとなります。また、月次損益を分析すると、期末月での売上高が通常月より多くなり、
   入金月では逆に売上高が少なくなりますので、月次損益をより的確に把握するためには 
   (4) のような洗替の会計処理をすべきでしょう。
2.狭義の意味での洗替処理(洗替方式又は洗替法)
 (1) 棚卸資産、有価証券の低価法
   棚卸資産や有価証券を低価法で評価する際の評価方法には以下の方法があります。
  ① 洗替方式(洗替低価法)
    期末に時価評価した価額が翌期には影響せず、翌期末にはその時点での時価と取得価額
   を比べる方法
  ② 切放方式(切放低価法)
    期末に時価評価した価額が翌期での簿価となり、翌期末ではその簿価と翌期末での時価
   とを比べる方法
  (注) 有価証券については低価法は税法等の改正により廃止されました。
 (2) 貸倒引当金の会計処理方法
  ① 洗替法
      前期末貸倒引当金の残高を全て戻入れ、新たに当期末残高を繰入れする方法
    (例)  前期末残高   貸倒引当金       80 / 貸倒引当金戻入益  80
         当期末残高   貸倒引当金繰入額  100 / 貸倒引当金      100
  ② 差額補充法
   前期末残高と当期末残高の差額を繰入れ、または戻入れする方法
    (例)  当期増加分の仕訳   貸倒引当金繰入額 20 / 貸倒引当金  20

                    (この解説文は私見を含んでおります。)

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