1.役員退職給与の損金算入時期 役員退職給与を支給する時、税務上いつの時点で損金となるかについては以下のよう に原則と特例のふたつの取扱いがあります。 (1) 原則 株主総会等の決議のあった日の属する事業年度に全額損金算入されます。 (役員の分掌変更等による場合を除く) ◎その事業年度内に支給した場合の仕訳例 役員退職金 ××× / 現金預金 ××× ◎その事業年度内に支給出来なかった場合の仕訳例 役員退職金 ××× / 未払金 ××× なお、損金経理しなかった場合は申告調整(減算)により損金に算入することができます。 (2) 特例 支払時に支払額を損金経理した時は特例として認められます。 残額があればその後についても支払額のみを損金経理しなければなりません。 ◎特例による仕訳例 第10期 役員退職金 10.000.000 / 現金預金 10,000,000 第11期 役員退職金 10.000.000 / 現金預金 10,000,000 第12期 役員退職金 10.000.000 / 現金預金 10,000,000 (注) 役員退職金を仮払金として経理した場合 支給時に仮払金経理した場合は株主総会等の決議のあった事業年度で次のような 振替仕訳により損金に算入されることになります。 役員退職金 ××× / 仮払金 ××× 株主総会の決議のあった事業年度に損金経理せず、その後の事業年度になって遡って 損金に算入することはできません。 2.役員の分掌変更等による退職給与 (1) 損金算入の要件 役員が正式な退職をしない場合でも以下の要件を満たしていれば退職金を支給することが できます。 ① 役員としての地位又は職務が激変している。 ② 実質的に退職したと同様の事情にある。 地位又は職務の激変とは以下のような場合をいいます。 ① 常勤役員が非常勤役員になった。 (非常勤になっても代表権をそのまま有している場合は該当しません。) ② 取締役が監査役になった。 ③ 分掌変更後の給与がおおむね50%以上激減した。 ただし、上記の要件を満たしていても経営上主要な地位を占めている場合には 「実質的 に退職した」 とは認められませんので注意が必要です。 (2) 損金算入の時期 役員の分掌変更等により退職金を支給する場合は、実際に支給した金額に限り損金算入 することができます。従って株主総会で支給することを決議しても未払金経理した額について は、その事業年度で損金算入することはできません。 3.過大役員退職金の判定 過大な役員退職金は税務上否認されてしまいます。 役員退職金の適正額をどの程度にするかについては、一般的に功績倍率によって判定さ れています。 適正退職金(最高額)=退職時の役員報酬月額×勤続年数×功績倍率 功績倍率についてはその会社の規模、業種等から判断されます。 詳しくは顧問税理士等の専門家にご相談下さい。 (功績倍率の例) 会長・・・3 社長・・・3 専務・・・2.5 常務・・・2.2 取締役・・・1.8 監査役・・・1.8 ちなみに平成11年札幌地裁において3.9倍を妥当とする判決が出されています。